いろんな表現が思うようにできなくなった時期があった

――アニメ「黒猫と魔女の教室」をご覧になった感想から教えてください。

ASCA 原作漫画が面白いので、そりゃあアニメも面白いですよねという話で。漫画なのに、ずっとお笑いを見ているような感覚があるんです。アニメもポップ+コメディ+青春+ラブコメと多くの要素がモリモリに詰まっていて、観る人を全く飽きさせませんし、テンポ感も良いのであっという間に引き込まれてしまいます。こんなにお腹を抱えて笑ったアニメがあったかなというくらい魅力的な作品です。

――オープニングテーマ「Cusp」のデモテープを最初に聴いた時の印象はいかがでしたか。

ASCA これまでのASCAの楽曲は初めて聴いて、難しそうだな、歌いこなせるのかなと思うような曲が多かったのですが、「Cusp」はメロディーが歌謡っぽいというか、懐かしさを感じるんです。音符が長いので、言葉数をたくさん詰められない。だからこそ伝えたいことをシンプルに、端的にしっかり伝えられる曲になるなと思いましたし、青春やひたむきさを描いたこの作品にもぴったり合うのではないかと感じました。

――歌い方のアプローチも変わりましたか。

ASCA 今までは曲調によって自分の声をどう変化させていくか、どういう味付けをしていくかというところにフォーカスを当てて歌ってきたんですが、ASCAとして活動していく中で壁がたくさんあって。その中の一つに、いろんな表現が思うようにできなくなった時期がありまして……。3年前のことなんですが、喉の手術をして、少しお休みをいただいたんです。これまで武器にしてきた、いろんな表現ができる自分というのが、そこで崩れてしまったんですよね。手術を経て、歌が楽しいと思えたときの自分にどうしたら戻れるんだろうと考えたら、いろんな欲がどんどん出てきて、身軽じゃなくなったんです。

――なぜでしょうか。

ASCA やりたいことが増えたことで飽和状態になっていて。どうしたものかと見つめ返したときに、やっぱり自分から出てくる声を、もう一回信じてみようと思えたんです。そのタイミングで「黒猫と魔女の教室」のお話をいただいて、ちゃんと自分の声を信じて歌って届けられる曲って何だろうというところで、今回の楽曲制作につながっていきました。

――声の回復には時間がかかりましたか。

ASCA すごくかかりました。手術をしたことで、それまで自分が心地よくない歌声の出し方をしていたような感覚があって。ASCAとして歌う楽曲は、高音で言葉数も多かったりするので、それを歌うための喉になっていたんでしょうね。そこで行き詰まってしまって、改めて発声方法をどうにかしなきゃいけないというところで、原点に立ち返って、自分が一番心地よく出せる場所、喉に負担をかけることなく歌えるようにするには、どうすればいいかという視点で、ボイストレーニングにしっかり通うようになって。それは今も続いています。

――元に戻るのではなく、新しい歌い方を見つけていくという感覚もあったのでしょうか。

ASCA そうかもしれないですね。初めて歌が楽しいと思ったのが小学生のときで、最初はあの頃の自分に戻らなきゃと思っていたんです。でも、戻れるわけがないんですよね。年齢を重ねて、体の機能も変わってきて、女性も声変わりすると言われているので、全く同じ声になることは不可能なんです。それを一生懸命求めてしまっていた時期は、本当に苦しかったんですけど、そうじゃないんだなって。今の自分の体でストレスなく歌えるところを探していくのが一番ゴールに近いんじゃないかと気づいてからは、気持ちも楽になっていきました。

――それによって歌い方も変わりましたか。

ASCA 分かりやすい変化で言うと、以前よりも低音をしっかり出せるようになりました。今思えば、手術前は喉を閉めた歌い方を続けてきたんですが、今はワンマンライブが終わった後も、まだ喉が疲れていないなという感覚があって。ちょっとずつ負担をかけずに歌う方法を見いだせてきているのかなと思います。

――ボイストレーニングの効果も大きいですか。

ASCA 大きいですね。デビュー当時の先生に再びお願いしているんですが、以前の自分は先生が言っている意味の1割も理解できていなかった気がしていて。我流で一生懸命歌ってきたものがあるから、そこを変えるのが怖かったのもあると思うんです。この歌い方で頑張って歌っていくんだと意地になっていた部分もあったんですけど、自分の気持ちが変わって、ちゃんと人の言うことを素直に聞いてみようと(笑)。言われたことを一回取り入れてみて、合わなかったらやめればいいし、合うんだったら続ける。合うということに気づけたらラッキーじゃないですか。同じ先生だから、一貫して同じことを言ってくれているんだけど、受け手側の私のマインドが変わったことで、先生の言っている意味が理解できるようになったんです。

――その変化に先生は気づいていますか。

ASCA はい。「前は人の話を聞いているようで、全然聞いてなかったもんね」と言ってました(笑)。そうやって率直な気持ちを言い合える関係性なんですが、最近は「ちゃんと歌えるようになったね」と言ってくれるところまで来ました。年々、人と対話すること、この人が何を伝えたくてその言葉を言っているんだろうという真意を見つけようとする気持ちが芽生えているのかなと思います。

――完成したアニメに、「Cusp」が流れる映像を初めて観たときのお気持ちはいかがでしたか。

ASCA 楽曲制作自体は、かなり前からスタートしていたのですが、アニメが始まる前に、オープニングが少しだけ聴けるPV映像が出ていたので、それを観て今か今かと待っていた期間があって。いざ形になったものがテレビでオンエアされたときは、本当にうれしかったですし、ちゃんと彼ら彼女たちの青春物語に寄り添えているし、親和性を持って歌うことができたなと感じました。この作品があったことで生まれた曲なので、生み出させてくれたことへの感謝が湧いてきました。