草川拓弥さん演じる佐久間が醸し出す、なんとも言えない情けなさが切なくなった
――『死ねばいいのに』はインパクトのあるタイトルで、劇中のセリフにも登場しますが、どのように向き合いましたか?
奈緒 タイトルを最初に見たとき、すごくドキッとして。この言葉をタイトルにして、セリフとして誰かに投げかけるというのは、どういう心持ちでいたらいいんだろうと、まずは自分を納得させないといけないなと考えていました。そこは京極夏彦さんが書かれた原作の力が大きくて。原作を読み終わったときに、この言葉は私が最初に思ったような言葉ではなくて、その裏には「死ねば?」でも「死んだら?」でもなくて、「いいのに」がものすごく大きな部分だなと感じたんです。おそらく「いいのに」の後は、さらに言葉が続くはずなんですよね。その後ろにある言葉のほうが大事だというタイトルなのかなと。たとえば「死ねばいいのに、生きている」と続くとしたら、その「生きている」ということにフォーカスを当てる作品なんだと感じて。この言葉に続くところを意識しながら、みなさんと作品を一緒に作りたいと思いました。「死ねばいいのに」というセリフを言うときも、他者に向けて言っているようで、映子にとっては大きな愚痴のような言葉だなという捉え方でいました。

――映子自身に返ってくる言葉でもあると。
奈緒 映画を観終わった後に、「死ねばいいのに」の後ろに続く言葉を想像できるような作品になったと思います。
――映子が対話をする人たちを演じる各キャストと、事前のリハーサルなどはありましたか。
奈緒 最初に金井監督と「リハーサルをやりましょう」という話をしていて、しっかりと時間をとっていただいて、入念に本読みとリハーサルをさせていただきました。ただ本番では、基本的なセリフは同じなのですが、全然違うものが生まれる場面も多くて、それが面白かったですし、刺激的でした。
――映子が対話をする中で、特に印象に残っている登場人物は誰でしょうか。
奈緒 初めて脚本を読んだときに、一番惹かれたキャラクターが草川拓弥さん演じる佐久間雄也(亜佐美の彼氏)でしたし、撮影中も大きく気持ちの動くシーンになりました。他の登場人物は総じて自分のことばかり話すんですが、雄也だけは「本当に亜佐美のことを好きだったのに、亜佐美のことを愛するための知見がなかったんだ」と思わせる発言が多くて。それは映子自身が自分にリンクするようなところもあって、ものすごく悔しかったり、苛立ちを覚えたり、感情が忙しいシーンになったんです。本読みのときには全くそんなことが起きていなかったので、本番で草川さんが醸し出す、なんとも言えない情けなさが切なくなったんですよね。

――完成した作品を観た印象はいかがでしたか。
奈緒 改めて奇跡的なタイミングで撮っていたんだなと感じることが多くて。現場ではモニターを見ていなかったので、今起きていることがどういうふうに映るのか分かっていなかったんですが、モニター前でスタッフさんが湧いていることが何度もあったんです。「今のはかっこよかった」という声があがっていることもあって、どんなふうに撮れているんだろうと楽しみでした。実際、映像で観たときに、「この空の色は奇跡的な色だな」「あの霧がこんな効果を生んでいたんだな」「風が面白い動きを生んでいるな」と一つひとつ感じられて。とても背景が力強く動いていたので、すごく感動しました。
