「映子のことを好きでいていいんだ」と感じられたことで、心持ちがそこで決まった

――主演映画『死ねばいいのに』は、対話の途中で舞台の一部が草原になるなど斬新な構成の作品ですが、最初に脚本を読んだときはどんな印象を持ちましたか。

奈緒 想像がつかない脚本だなと思いました。違うフォントで書かれている部分があって、「これはどういうことですか?」と確認したら、「草原に行く想定で書いてあるんですけど、それも現場に行ってみて、どうなるか分からないです」とのことで。草原でなければ普通の会話劇なんですけど、草原での撮影と、リアルな場所での撮影を一回ずつ二回重ねることになるので、出来上がるまで、どんな映画が完成するのか分からないなというのが最初に脚本を読んだときの大きな楽しみでもありました。

――二か所での撮影は、どのように進んでいきましたか。

奈緒 どちらの撮影もカットはあるんですけど、舞台のように一連のシーンを最初から最後までつなげてお芝居を重ねることが多かったです。初日が前原滉さんとの撮影だったんですが、最初から「このシーンは一連でお願いします」ということだったので、すごく緊張感がありました。

――草原とリアルな場所でテンションを合わせるのも大変ですよね。

奈緒 最初は合わせようとしていたんですが、草原に行くと強風が吹いていたり、霧がかかった日もあったりして。グリーンバックなら人間が自由にコントロールできるところが、リアルなグリーンバックですからね(笑)。人間が関与できない力が働くので、予想ができないということを私たちも現場で知って。そこからは無理にリアルと近づけるのではなく、概念としてつながっている部分を、もっと自由に表現しようと。家具の配置なども最初はぴったり合わせようとしてくださっていたんですが、せっかく広い草原で撮るんだから、ある程度は動かしてもいいんじゃないかということになったので、当初の想定よりも制限なく撮ることができました。

――物語の大半は、奈緒さん演じる渡来映子と、何者かに殺害された鹿島亜佐美と付き合いがあった人々との対話によって進行します。

奈緒 一対一の撮影だからこそ、一日一日の気持ちの変化が色濃くありました。毎日同じ作品を撮っているというよりは、「今日は誰と対決するのか?」みたいな日々でした。

――映子は謎めいた人物で、なぜ亜佐美と関係した人たちを訪ね歩くのか、そもそも亜佐美とどういう関係性にあるのかも、後半まで明かされません。

奈緒 最初はつかみどころがなくて、どんな女性かも分からないので、どういうふうに演じるかも選択肢がたくさんある役だなと思いました。だからこそ金井純一監督との会話が重要になると感じたので、「できるかぎりコミュニケーションをたくさん取りたいです」というお話をしたら、金井監督も同じ意見で、何度も連絡を取り合いながらクランクインまでの期間を過ごしていました。

――その中で、特に印象に残ったやり取りは?

奈緒 金井監督が「映子についてどう思うか」「脚本についてどう思うか」という意見を誰かに聞きたくなって、この映画に参加しないスタッフさんにも脚本を読んでもらったそうなんです。その中で「映子のことをもう少し好きになりたい」という声があったと仰っていて、それが大きなヒントになりましたし、映子を好きになることが今回の作品を作っていく中で目指すべきところでもあるなと。そのときに私自身、「映子のことを好きでいていいんだ」と感じられたことで、心持ちがそこで決まったような感覚がありました。