AIが普及しても、役者という仕事は変わらないもの

――今回、改めて『頭痛肩こり樋口一葉』の台本を読んで、どんなことを感じましたか。

貫地谷 耳あたりのいいリズムのある台本で、温かくて、すごく悲しいことも面白おかしく描かれていて。人が一生懸命生きるというのは、傍から見ると、クスッと笑えるような部分もあります。読み終えた後に、いろいろな学びがありましたし、懸命に生きている一葉を見習って、自分もしっかりしなきゃいけないと思いました。一葉は生きている間に自ら「法通妙心信女」という戒名をつけて、「自分の心を死の世界に置いているだけ」と言いながらも、芸術の世界でやりたいことがたくさんあって、すごくギラギラしているんです。でも、女性が何か新しいことを始めるには難しい時代なので、いろんな葛藤があって、その気持ちを吐露する長ゼリフもあるんですが、それが私自身にもすごく突き刺さってくるんです。この戯曲には6人の女性が登場して、それぞれ全く違うタイプなんですが、井上ひさしさんは男性なのに、巧みに書き分けて、それぞれの人物像を浮かび上がらせていることに感銘を受けました。

――4年ぶりの舞台ということで、お芝居以外で事前に準備していることはありますか。

貫地谷 みなさん畳芝居って腰が痛い、肩が痛いと、いろんなところが悲鳴をあげていくんですが、ずっと私はパーソナルトレーニングに週2回通っていまして、そのおかげもあってか、前回は痛いところが何もなかったんです。最近は子育てがあるので、なかなか行けていないんですが、また再開して、畳芝居でも痛くならない体を作りたいと考えています。

――肉体的な面で4年前との違いはありますか。

貫地谷 産後あるあるみたいなんですが、一時的に視力が悪くなるんです。また戻ると言われているんですが、まだ私は戻っていないんですよね。ただ一葉はひどい近眼なので、前回よりも一葉に近づけたかなとも思いますし、その設定を活かして、よりその人柄を深掘りできたらいいなというのも個人的なテーマとしてあります。

――前回に引き続き演出は栗山民也さんですが、どんな印象をお持ちですか。

貫地谷 前回の台本を読み返すと、栗山さんに言われたことをたくさん書き込んでいたんですが、ちょっとした一言でハッとさせることを仰る方なんですよね。それだけでガラッとお芝居が変わっていくというか。栗山さんが演出した他の舞台を観に行っても感じることなんですが、照明やセット、衣装に関しても、シンプルで余計なものが削ぎ落とされていて本当にかっこいいんです。今回は稽古期間が短いのですが、そんな中でも栗山さんは私たちを魔法にかけてくれるんじゃないかと楽しみにしています。

――先ほど「世間のニュースにも目が行くようなった」というお話がありましたが、エンターテインメントを作る側として、仕事へのものの見方が変わってきた部分はありますか。

貫地谷 AIの普及が凄まじくて、本当に何でも相談できるので、私自身も課金して使っています。ですが役者という仕事は今後も変わらないものなのではないかと改めて思っています。CGなどは、どんどん優れたものが出てきていますが、特に演劇というステージは、その空間でしか味わえないエンターテインメントをお届けできるもので、これからの時代は、さらに大切な役割を担っているんじゃないのかなと考えています。小学生のとき、学校に劇団が来てくれたことがあって、その舞台が面白くて、楽しくて、今も心に残っているんです。人間として大事な何かを教えてもらった記憶があります。そういう感動や臨場感を、お芝居を通して皆さんに届け続けたいです。